著作権
生成AIを使ったロゴやデザインの著作権は誰のものか
文化庁の文化審議会が2024年に示した考え方では、短いプロンプトで出てきた画像は、そもそも著作物に当たらない可能性が高いとされています。人が手を加えた部分は著作物になり得ます。デザイナーに聞くことと、契約書に書くことが変わります
日本では、AIが生成したものが著作権で守られるのは、人が創作的に寄与した場合に限られます。短いプロンプトだけでは足りません。後から人が加えた創作的な修正は守られます。生成AIを使ったデザインを発注するなら、どの部分が生成で、どう手を入れたのかを確認し、契約で著作権法第27条と第28条の権利も含めて移転されているかを確かめてください。
文化庁の考え方
参照されるのは、2024年3月15日に文化審議会著作権分科会法制度小委員会が取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」です。法律でも判決でもありません。生成AIについての判例や裁判例の蓄積がない中で、考え方を整理するために作られた文書で、いま実務で拠り所にされているのはこれです。
出発点は簡潔です。AIは法的な人格を持たないので、著作者にはなれません。AI生成物が著作物に当たる場合、著作者はそのAIを使って創作した人です。そして、AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、その生成物に著作物性は認められないと考えられています。
判断の3つの要素
著作物性は、個々の生成物ごとに、単なる労力ではなく創作的寄与がどの程度積み重なっているかで総合的に判断されます。考え方では、要素の例として3つを挙げています。
1つ目は、指示・入力の分量と内容です。創作的な表現を具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高めます。長い指示でも、アイデアを示すだけなら判断に影響しません。
2つ目は、生成の試行回数です。回数が多いこと自体は影響しません。生成物を確認し、指示を修正しながら試行を繰り返す場合には、著作物性が認められることも考えられます。
3つ目は、複数の生成物からの選択です。選ぶこと自体は影響しません。ただし、通常は創作的とされる行為の中にも選択の要素があることには配慮が必要だとしています。
デザインの仕事にとって一番大事なのは、次の一文です。人がAI生成物に創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分は、通常、著作物性が認められる。それ以外の部分には影響しない。
ロゴの場合に何が起きるか
1行のプロンプトで画像生成AIから出てきたシンボルを、そのままロゴに使ったとします。この考え方に沿えば、そのシンボルには著作権がない可能性があります。自社で使うことはできます。失うのは、他社に真似されたときに著作権を根拠に止める手段です。
著作物性がないものでも、営業上の利益を侵害するような場合には民法上の不法行為になり得ると考え方は触れていますが、判例上のハードルは高いものです。ロゴには、商標登録という別の制度があります。特許庁の説明によれば、商標権は特許庁に出願して登録を受けることで発生し、登録すると、指定した商品やサービスについてそのマークを独占的に使え、同一や類似の商品・サービスに同一や類似のマークを使う第三者を排除でき、侵害には差止めや損害賠償を請求できます。存続期間は10年で、何度でも更新できます。著作権とは仕組みが違うので、公開前に弁理士に相談する価値があります。
デザイナーが描き直し、整え、形のシステムとして組み立てたシンボルは、別物です。描き直した部分にはデザイナーの表現があり、契約で自社に移転できるのはその部分です。
反対側のリスク:他人の作品に似てしまう
侵害かどうかは、AIを使っても使わなくても同じように判断されます。既存の著作物との類似性と、それに依拠したかどうかです。考え方は、作風や画風が似ているだけならアイデアの類似にとどまり、それだけでは侵害にならないとしています。表現が似ていれば、どの道具で作ったかに関係なく問題になります。
生成した素材を提案に入れる前に、既存のロゴや有名な商標とどう照らし合わせているか、デザイナーに聞いておきましょう。
多くの契約書で抜けている一文
著作権法第61条第2項は、著作権を譲渡する契約で第27条(翻訳権、翻案権等)と第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)が特に掲げられていないとき、これらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定する、と定めています。「著作権はすべて発注者に移転する」とだけ書いた契約だと、自社のロゴを自由に改変できない可能性が残ります。
IPAのアジャイル開発版モデル契約の第17条は、よく使われる書き方の例です。著作権は「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」として、完了確認と委託料の支払いの時点で移転し、受託者は著作者人格権を行使しないと定めています。著作者人格権は譲渡できないため、不行使の約束で手当てするのが一般的です。
納品を受ける前に聞くこと
どの要素をAIで生成し、どのツールを使ったか。そのツールの規約で生成物の商用利用が認められているか。作業ファイルをもらえるか。レイヤーの残ったデータは、書き出した画像では見えない人の作業を示してくれます。そして、既存の商標との類似をどう確認したか。
AIをデザインから締め出そうという話をしたいわけでもありません。生成AIは初期の探索に向いていて、ポートフォリオサイトを作る使い方も紹介しています。お金を払う価値があるのは、その後の人の判断です。契約書と作業ファイルが、その判断がどこにあるのかを示しているかを見てください。AI契約のデータ側の論点は、AIサービスを契約する前に、経産省のチェックリストで確認したいことにまとめています。