アプリ
アプリは自社名義の開発者アカウントで公開する
AppleもGoogleも、アカウントの持ち主をアプリの販売元として表示します。制作会社のアカウントから公開すると、後から移すことはできても副作用があります。自社のアカウントに必要なのは、D-U-N-Sナンバーと少しの準備期間です
開発を始める前に、自社でApple Developer Programに組織として登録し、Google Playにも組織アカウントを作って、制作会社をそのアカウントに招待してください。どちらのプラットフォームも、組織として登録するにはD-U-N-Sナンバーが必要です。Dun & Bradstreetから無料で取得できますが、数営業日から1か月ほどかかるので、最初に動き出すべき項目です。
アカウントの名義が重要な理由
App Storeでは、組織の正式名称がアプリの販売元として表示されます。Google Playの組織アカウントでは、デベロッパー名、住所、メールアドレス、電話番号が公開されます。お客様から見てもプラットフォームから見ても、アカウントの持ち主がそのアプリの会社です。
制作会社のアカウントから公開すると、3つのことが起きます。販売元として制作会社の名前が出ます。AppleやGoogleとの契約は制作会社のものなので、プラットフォームからの通知、審査結果、ポリシーの警告はまず制作会社に届きます。そして取引をやめるときには、アプリを移す必要があります。移すことはできますが、たいてい手間がかかります。
Appleが求めるもの
Appleの登録ページに、組織として登録する場合の要件が書かれています。会社はAppleと契約を結べる法人でなければならず、屋号、架空の事業名、支店は受け付けられません。登録する人はアカウント保有者(Account Holder)になり、会社を法的に拘束する権限を持っている必要があります。オーナー、役員、またはその権限を上位者から与えられた社員などです。
会社のドメインの仕事用メールアドレスと、会社に紐づくドメインで公開され、きちんと機能しているWebサイトも確認されます。SNSのページや、ドメイン業者の表示しかないページでは通りません。メンバーシップは年間99米ドルで、登録時に現地通貨で表示されます。
D-U-N-Sナンバーは、Appleが会社を確認するための番号です。AppleのD-U-N-Sのヘルプによると、すでに番号が割り当てられている会社も多いので、まず検索します。なければDun & Bradstreetに無料で申請し、受け取りまで最大5営業日、その後Appleに情報が届くまでさらに最大2営業日を見込みます。D&Bから問い合わせが来ることがあるので、登記の書類を手元に用意しておきます。
Googleが求めるもの
Google Playは、組織アカウントの作成にD-U-N-Sナンバーを必須としています。あわせて、組織名、住所、電話番号、Webサイトが必要です。手続きに30日ほどかかる場合があること、D-U-N-Sナンバーのない組織アカウントには免除も期限の延長もないこと、Dun & Bradstreetでの申請は完全に無料であることも書かれています。最後の注意は、無料の登録に高い手数料を取る第三者のサービスがあるためです。
Google Playで組織アカウントを使う理由はもう1つあります。2023年11月13日以降に作成された個人用アカウントは、製品版へのアクセスを申請する前に、12人以上のテスターが14日間連続でオプトインした状態でクローズドテストを実施する必要があります。これは個人用アカウント向けの要件です。会社のアプリを個人のアカウントから出すと、この待ち時間と、名義の問題を両方抱えることになります。
後からアプリを移す場合
Appleは開発者アカウント間のアプリの移管に対応していますが、何が起きるかは事前に読んでおく価値があります。キーチェーン共有を使うアプリでは保存されたログイン情報を引き継げないため、ユーザーは一度ログインし直すことになります。Apple PayのマーチャントIDはアプリと一緒に移らず、次のアップデートで新しく作る必要があります。Sign in with Appleを使うアプリでは、移管の前にユーザーごとの移管用識別子を生成する必要があります。アプリから更新するWalletのパスは、新しいアカウントで発行し直すことになります。
すでに制作会社のアカウントにアプリがあっても、慌てる必要はありません。リリースの時期とユーザーへの案内を用意して、小さなプロジェクトとして移管を計画すれば済みます。次のアプリで同じ状況を作らないことのほうが大事です。
自社のアカウントで制作会社と仕事をする
アカウント保有者の役割は、署名権限のある社内の人が持ちます。Appleでは後から譲ることもできますが、最初は自社から始めるべきです。制作会社の開発者は、開発、テスト、アップロードに必要な権限でチームに招待します。Google Play Consoleでも、ユーザーと権限の設定で同じようにします。
アカウントの名義は、ソースコードのリポジトリ、ドメイン、アクセス解析、サーバのアカウントといった引き継ぎの項目と一緒に契約に書いておきます。公開前には、アプリ内のプライバシーポリシーへのリンクのように、どのみち自社が持つべきものもプラットフォームから求められます。アプリやWebサービスを公開する前に確認したい7つの法令対応にまとめています。
キックオフの前にやること
今週中にD-U-N-Sナンバーを検索する。会社のドメインでWebサイトが公開されていて、登録する人がそのドメインの仕事用メールアドレスを持っているか確認する。社内の誰がアカウント保有者になるかを決める。この3つが済んでいれば、最初のビルドができる頃には、たいていアカウントの準備も終わっています。
制作会社が用意するもの全般、サーバや管理者アカウントについても、考え方は同じです。残りの項目はWebサイトやアプリの制作会社に、発注前に聞いておきたいセキュリティの質問に書きました。