経営
AI導入とリスキリングには補助金と助成金がある
IT導入補助金は2026年にデジタル化・AI導入補助金へ名称が変わり、最大4,500万円、補助率は最大4分の3です。訓練費用には人材開発支援助成金が最大75%を助成します。
AIの導入が予算で止まっている場合、制度を確認していないだけということがあります。日本の支援制度は、この2年で導入する側に寄っています。
制度が導入側に寄った理由
2025年12月23日に閣議決定された人工知能基本計画は、日本の課題を研究開発の遅れではなく実装の遅れだと整理しました。
この整理は、支援の向き先を変えます。研究が課題なら支援は研究機関に向かいます。実装が課題なら、支援は導入する企業に向かいます。
実際、IT導入補助金は2026年にデジタル化・AI導入補助金へ名称が変わりました。名称にAIが入ったことは、対象の考え方が変わったことを意味します。上限は4,500万円、補助率は最大4分の3です。
2つの制度は用途が違う
補助金と助成金は、しばしば混同されますが、通る条件が違います。
デジタル化・AI導入補助金は、ツールやシステムの導入費用が対象です。公募期間があり、審査があり、採択されなければ受け取れません。事業計画の質が結果に影響します。
人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、訓練の費用と訓練中の賃金が対象です。要件を満たせば支給される性質のもので、訓練費用の最大75%が助成されます。
前者は「何を入れるか」、後者は「誰ができるようになるか」に対応しています。
前の記事で見たとおり、DX人材の質が確保できていると答えた日本企業は3.8%です。ツールだけ入れて使える人がいない状態は、この数字が示す典型的な行き詰まりです。2つの制度を組み合わせる意味は、そこにあります。
申請で通りにくくなる書き方
制度の詳細は毎年変わるので、ここでは変わらない部分だけ書きます。審査を通る事業計画には、共通する要素があります。
現状の数字がある。 今どの業務に何時間かかっているか。改善前の数値がない計画は、効果の説明ができません。
対象業務が工程で切られている。 「営業活動の効率化」ではなく「見積書作成の一次ドラフト」のように、開始と終了がある単位で書かれていること。
導入後の役割分担が書かれている。 誰が入力し、誰が確認し、誰が直すか。人工知能基本計画の4つ目の柱が「人とAIの役割分担」である以上、この記述は政策の方向とも一致します。
測る指標が決まっている。 処理時間、件数、差し戻し率。導入後に何を見るかが書かれていること。
この4つは、補助金の申請書のためだけのものではありません。社内の稟議でも同じものが必要になります。片方のために書けば、もう片方でも使えます。
補助金が通らない理由の多くは、制度の理解不足ではなく、事業計画に数字が入っていないことです。数字は導入前にしか取れません。
順番
実務としては、この順番が効率的です。
- 対象業務を1つ決めて、現状の数字を取る
- 導入後の役割分担を書く
- 公募要領を確認して、要件に合わせて計画を整える
- 訓練が必要なら、助成金のほうも並行して確認する
3番目から始める会社が多いのですが、1番と2番がないと3番は書けません。そして1番は、時間が経つほど取りにくくなります。
制度の名称、上限額、補助率、公募時期は年度ごとに変わります。この記事の数字も、申請前に必ず最新の公募要領で確認してください。
出典
- 厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
- 中小企業庁 デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金、2026年に名称変更、上限4,500万円、補助率最大4分の3)
- 内閣府 人工知能基本計画(2025年12月23日閣議決定)