AI導入
導入率は追いついた、効果はまだ追いついていない
生成AIを使う日本企業は86.4%。米国は90.9%です。導入の差はほぼ消えました。残っているのは、導入したあとに何が変わったかという差です。
数年前まで、日本のAIの話は「遅れている」で始まっていました。その前提は、もう使えません。
令和8年版情報通信白書によれば、生成AIを何らかの形で利用している企業の割合は日本で86.4%です。前回調査の55.2%から大きく伸びました。米国は90.9%、ドイツは91.6%、中国は98.1%。差は数ポイントです。
方針を定めている企業も68.9%まで来ました。前回は49.7%でしたから、こちらも一年で大きく動いています。
導入という指標で見る限り、日本は横並びに戻りました。
それでも現場の実感が変わらない理由
同じ白書の中で、日本だけが突出している設問があります。「組織的な取組はない」と答えた企業が27.0%。米国は1.4%、ドイツは4.9%、中国は2.6%です。
もうひとつ、業務プロセスをAI中心に組み替えたと答えた割合は、業務の種類によって6.0%から11.9%です。
この2つを並べると、何が起きているかがはっきりします。ライセンスは配られた。方針も出た。業務は変わっていない。
導入率は、契約と配布で上がります。効果は、業務設計を変えないと上がりません。前者は数か月で終わります。後者は誰かが担当しないと永遠に始まりません。
使い方の質も違っている
白書には利用の種類別データもあります。日本は文章の生成が中心で、それ以外が薄い。
| 用途 | 日本 | 米国 | ドイツ | 中国 |
|---|---|---|---|---|
| 画像・動画の生成 | 16.3% | 41.0% | 47.6% | 55.8% |
| コードの生成 | 7.0% | 35.4% | 25.0% | 33.5% |
| 音声の生成 | 6.5% | 高い | 高い | 高い |
コード生成が7.0%というのは、開発の現場でAIがほとんど使われていないということです。米国の5分の1です。
文章だけに使っている状態というのは、AIを検索の延長として扱っているということでもあります。実際、白書の比喩の設問で日本の回答の2位は「辞書・百科事典」でした。米国と中国では「友人」、ドイツでは「相談相手」が上位に来ます。
道具として見ているか、相手として見ているか。この違いが、業務の組み替えに手をつけるかどうかを分けています。
効果の差はどこで生まれるか
効果が出ている組織を見ると、共通しているのは技術選定ではありません。次のような、地味な決定がされています。
- 対象業務を工程単位で切っている
- 出力の品質基準を文章で持っている
- 人が判断する箇所を明示している
- 結果を毎月同じ指標で見ている
このどれもが、AIベンダーの提案書には書かれていない項目です。書かれていないので、誰も担当しないまま残ります。
次にやること
もし自社の状況が「使ってはいる」で止まっているなら、確認する順番はこうです。
まず、AIを使っている業務を具体的に3つ挙げられるか。挙げられなければ、利用は個人の工夫にとどまっています。
次に、その3つについて、出力を誰が確認しているかが決まっているか。決まっていなければ、品質のばらつきが理由でいずれ使われなくなります。
最後に、その3つの前後で数字が変わったかを見ているか。見ていなければ、効果があるかどうかを誰も判断できません。
86.4%という数字は、日本企業がスタートラインに立ったことを示しています。順位が決まるのは、この先です。