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AI活用

日本ではAIが辞書で、米国では同僚になっている

生成AIを何にたとえるかという設問で、日本の回答の2位は「辞書・百科事典」でした。米国と中国では「友人」です。この差が使い方の差を作っています。

公開 読了 約2分

調査の中には、数字より示唆的な設問がまれにあります。令和8年版情報通信白書の「生成AIを何にたとえるか」という設問がそれです。

日本の回答で上位に来たのは「辞書・百科事典」でした。米国と中国では「友人」、ドイツでは「相談相手」が上位です。

たとえ方の話に見えますが、実際には業務設計の話です。

辞書として使うと、業務は変わらない

辞書は、こちらが聞いたことに答える道具です。使う側が質問を持っていることが前提で、答えを受け取ったあとの判断はすべて人間に残ります。

この使い方には、はっきりした上限があります。作業は少し早くなりますが、工程の数は変わりません。調べる時間が短くなっただけで、資料を作る、確認する、承認を取るという流れはそのままです。

日本企業の生成AI利用が文章生成に集中しているのも、同じ理由だと考えられます。白書によれば、画像・動画の生成は16.3%(ドイツ47.6%、米国41.0%)、コードの生成は7.0%(米国35.4%)です。

辞書を引く感覚で使っている限り、用途は文章にとどまります。

同僚として使うと、工程が減る

「友人」や「相談相手」という回答が示しているのは、往復のあるやりとりを前提にしているということです。こちらの案を見せて、批判をもらい、直す。前提が足りないと指摘される。別の選択肢を出される。

この使い方では、AIが工程のひとつを丸ごと引き受けます。一次ドラフトの作成、レビュー観点の洗い出し、抜け漏れの検出。人間が最初からやっていた工程が消えます。

工程が消えるので、業務プロセスの形が変わります。白書で「業務プロセスをAI中心に変更した」と答えた企業が6.0%から11.9%にとどまっている理由は、ここに繋がっています。多くの現場が、まだ工程を消すところまで来ていません。

なぜ日本では辞書型が定着したか

理由のひとつは、導入の入口が「調べ物の効率化」だったことです。安全で、説明しやすく、反対されにくい。最初の一歩としては正しい選択でした。

もうひとつは、出力に責任を持つ人が決まっていないことです。責任者がいない状態では、AIの提案を業務に組み込めません。組み込めないので、参考情報として扱うしかない。参考情報として扱う道具は、辞書です。

つまり辞書型の使い方は、担当者の理解不足ではなく、体制の帰結です。

使い方を変えたければ、プロンプトの研修ではなく、出力に責任を持つ役割を先に決めることです。

移行するために決める3つのこと

辞書型から同僚型に移すために必要なのは、次の3点です。

  1. AIが担当する工程を1つ選ぶ。 補助ではなく担当です。一次ドラフトはAIが作る、と決めてしまうこと。
  2. その工程の出力責任者を置く。 通す基準を文章にして、その人が判断する。基準がないと全員が全部を見ることになり、以前より遅くなります。
  3. 人間の工程を1つ消す。 何も消えていないなら、それは工程が増えただけです。効果は出ません。

3つ目が一番抵抗を受けます。しかし、ここを通らないと業務プロセスは変わりません。

白書の比喩の設問は、日本企業がAIをどう位置づけているかを一言で示しています。位置づけを変えるには、誰が何に責任を持つかを決め直す必要があります。ツールの入れ替えで代替できるものではありません。

出典

  1. 総務省 令和8年版情報通信白書(2026年7月24日公表)

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