ガバナンス
社員がAIを使っているなら、AI事業者ガイドラインは自社の話です
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は2026年3月31日に第1.2版になりました。AI開発者、AI提供者、AI利用者の3つの主体と10の指針を定めています。多くの会社はベンダー向けの文書だと思っていますが、社員が業務でモデルを使った時点でその会社はAI利用者で、利用者にも求められることがあります。
AI事業者ガイドラインは、企業がAIをどう扱うべきかについての日本政府の中心的な文書です。総務省と経済産業省が共同で出しています。第1.0版が2024年4月19日、第1.1版が2025年3月28日、第1.2版が2026年3月31日です。
法律ではありません。ただ、規制当局、大手の取引先、そして最近は調達部門が「AIをどう管理していますか」と聞くときに指し示す基準です。2026年に日本の大企業へ何かを売っているなら、この質問は来ると思っておいたほうがいいです。
3つの主体があり、自社はそのどれかです
ガイドラインはすべての組織をAI開発者、AI提供者、AI利用者の3つに分けます。多くの経営者はこの並びを見て最初の2つで読むのをやめます。自社はモデルを学習させてもAI製品を売ってもいないから、他社の文書だと。
そうではありません。ガイドラインのいうAI利用者は、事業でAIシステムを使うあらゆる組織です。チャットボットで提案書の下書きをする営業部はAI利用者です。モデルでPDFからデータを抜き出す管理部門はAI利用者です。AIアシスタントを前に置いたカスタマーサポートはAI利用者です。誰も決めていなくても、いまの日本のほとんどの会社がそうです。
10の指針
共通の指針は10あります。人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ、教育・リテラシー、公正競争確保、イノベーションです。
開発者ではなく利用者として読むと、実務の質問に変わります。モデルが間違えたとき社内の誰が責任を持つのか。どの判断にAIを関与させ、どの判断を人に残すのか。何を入れてよく、何を絶対に入れてはいけないのか。誰が使い方を教わっていて、教わったことをどう確認するのか。
これらは設計の質問です。どれも画面、業務フロー、社内ルールの中で答えるか、あるいはどこでも答えられないままかのどちらかです。
1.2版で変わったこと
令和7年度の更新内容資料は、改訂の背景をはっきり書いています。AIエージェントとフィジカルAIが定義、便益、リスク、留意事項とともに書き加えられました。リスクの記述はリスクベースアプローチの方向に寄りました。主体区分の役割は補足されました。そして、ガイドラインの分量が増える中で、これからAIガバナンスを始める地方自治体や小規模事業者にも使えるバランスが重要だという検討会構成員の意見を、そのまま記録しています。
最後の点が役に立ちます。私たちの読み方はこうです。両省は小さな会社にもこの件について書かれた方針を持つことを期待していて、それが100ページにはなり得ないこともわかっています。
方針とはどういうものか
私たちが一緒に働く会社の多くでは、数ページに収まります。承認済みのツールはどれか。どのデータを入れてよく、どれはだめか。どの出力はお客様に届く前に人の確認が要るか。管理責任者は誰で、いつ見直すか。それに、ルールが保管されるのではなく理解されるように、部署ごとに半日の研修。
私たちはこれをプロダクトと並行して書きます。導入の後に届くルールは読まれないからです。最初のパイロットの前に始めれば、方針の初版と研修計画までで1週間ほどです。すでにパイロットが動いていて方針がないなら、いま予定に入れるべき1週間はそれです。