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75歳以上が65歳から74歳を上回った
2025年10月1日時点で、日本の75歳以上は人口の17.3%、65歳から74歳は12.1%です。高齢者向けという言葉が指す対象が、静かに入れ替わりました。
令和8年版高齢社会白書の中で、実務に直接効いてくるのはこの一行だと思います。
2025年10月1日時点で、75歳以上が人口の17.3%、65歳から74歳が12.1%。75歳以上のほうが多くなりました。
総人口は1億2,322万人、65歳以上は3,622万人、高齢化率は29.4%です。2070年には2.6人に1人が65歳以上になる見通しが示されています。
「高齢者向け」の中身が変わった
これまで多くの企業が想定してきた高齢のユーザー像は、65歳から74歳に近いものでした。定年前後で、スマートフォンを持っていて、仕事でパソコンを使った経験がある層です。
その層より、75歳以上のほうが多くなりました。
75歳以上には、次のような違いがあります。
- 視覚の変化が進んでいる。小さい文字とコントラストの低い配色が読めなくなる
- 手指の細かい操作の精度が下がる。小さいボタンと近接した選択肢が押し分けられなくなる
- 短期記憶の負荷に弱い。前の画面の情報を覚えて次の画面で入力する形式が通らなくなる
- 仕事でパソコンを使った経験がない人の割合が増える
このどれもが、設計で対応できる範囲のものです。ただ、対応するには、想定する利用者を更新する必要があります。
数字が示す実際の影響
前の記事で見た国際比較の数字を、この人口構成と重ねます。
65歳以上のネットバンキング利用は日本で10.0%。行政手続きは9.2%。オンライン診療は0.3%。
3,622万人のうち、大半がこれらのサービスの外にいます。そして、その中の多数派が75歳以上に移りました。
サービス側が想定を更新していない場合、対象から外れる人の数は、これから毎年増えます。
設計基準として使える数値
75歳以上を想定に含めるとき、具体的な基準はいくつか決まっています。
文字サイズ。 本文16px以上。日本語の場合、ゴシック体で字間をわずかに広げると読みやすくなります。
コントラスト比。 本文で4.5対1が最低、7対1あると安定します。ブランドカラーの薄いグレーは、この時点で使えないことが多いです。
タップ領域。 最低44px四方。隣接する要素との間隔も確保します。実機で、指で試すのが確実です。
1画面の選択肢。 少ないほど完了率が上がります。並べるより順に進めるほうが通ります。
タイムアウト。 入力に制限時間がある画面は、延長できるようにする。時間切れで最初からやり直しになる設計は、ここで確実に脱落します。
75歳以上向けの設計というのは、特別な機能を足すことではありません。若い利用者が気づかないまま許容していた無理を、取り除くことです。
副次的な効果
この基準は、高齢者以外にも効きます。
明るい屋外で画面を見ている人、片手がふさがっている人、疲れている人、その言語の母語話者でない人。条件が悪い状態で使っている人は、常に一定数います。
75歳以上を基準に設計すると、そうした状況全部に効きます。逆に、健康な30代が理想的な環境で使う前提で設計すると、それ以外の全員が少しずつ使いにくくなります。
人口構成は、すでに変わりました。設計の前提を変えるかどうかは、各社の判断です。