アクセシビリティ
65歳以上のネットバンキング利用は日本10.0%、スウェーデン94.2%
内閣府の国際比較で、65歳以上がインターネットで銀行取引をする割合は日本10.0%、米国73.9%、ドイツ31.7%、スウェーデン94.2%でした。高齢化率が最も高い国が、最も使えていません。
内閣府の令和8年版高齢社会白書の特集に、第10回の高齢者国際比較調査が載っています。2025年9月から11月に実施され、日本1,267人、米国843人、ドイツ766人、スウェーデン955人が回答しています。
その中の図9が、この記事で扱う数字です。65歳以上がインターネットで何をしているか。
| 用途 | 日本 | 米国 | ドイツ | スウェーデン |
|---|---|---|---|---|
| 家族・友人との連絡 | 84.1% | 90.3% | 80.9% | 91.3% |
| 銀行取引 | 10.0% | 73.9% | 31.7% | 94.2% |
| 行政手続き | 9.2% | 33.7% | 26.1% | 71.4% |
| オンライン診療 | 0.3% | 20.4% | 7.2% | 22.2% |
連絡はできています。84.1%です。スウェーデンの91.3%と比べて、致命的な差ではありません。
銀行取引になると10.0%対94.2%になります。
端末や回線の問題ではない
同じ人たちが、同じ端末で、家族との連絡には使えています。だから、機器を持っていないとか、接続がないという説明は成立しません。
連絡アプリは使えて銀行アプリは使えない。この差を作っているのは、アプリの側です。
具体的には、次のような要素です。
- 一度の画面に置かれている情報量
- 専門用語の多さ
- 認証の手順の数
- 間違えたときに戻れるかどうか
- 文字の大きさとコントラスト
連絡アプリは、間違えても大きな損害が出ません。だから試せます。銀行アプリは、間違えると資産が動きます。手順が複雑で、失敗の代償が読めない設計だと、試行そのものが止まります。
10.0%というのは、機能が使えないという数字ではなく、怖くて試せないという数字だと考えたほうが実態に近いと思います。
行政手続き9.2%とオンライン診療0.3%
さらに低いのが行政手続きの9.2%と、オンライン診療の0.3%です。
0.3%は、統計上ほぼ存在しないという水準です。スウェーデンの22.2%、米国の20.4%と比べると、同じサービスが提供されているとは思えない差があります。
高齢化率が29.4%(2025年10月1日時点、65歳以上3,622万人)で、75歳以上(17.3%)が65歳から74歳(12.1%)を上回っている国で、オンライン診療の高齢者利用が0.3%です。
需要がないわけではありません。移動が難しい人ほど、本来は必要とするはずのサービスです。
市場として見た場合
3,622万人が、デジタルの金融サービスと行政サービスをほとんど使っていません。
これを課題として見ると社会問題ですが、事業として見ると未開拓の市場です。そして、この市場で勝つために必要なのは新しい技術ではありません。既存のサービスを、試せる形にすることです。
スウェーデンの94.2%が示しているのは、高齢者がデジタル金融を使えないわけではないという事実です。使える形で提供されている国では、使われています。
高齢者向けにわざわざ別のアプリを作る必要はありません。今のアプリで、手順を減らし、戻れるようにし、専門用語を減らせば、数字は動きます。
設計として何を変えるか
高齢者を対象にした改善は、多くの場合すべての利用者にとっての改善になります。
- 1画面1タスクにする。 選択肢を並べるより、順番に進める形のほうが完了率が上がります。
- 取り消せることを明示する。 「あとで変更できます」と書いてあるだけで、進む人が増えます。
- 専門用語を最初に説明しない。 説明が必要な語を使わない形に書き換えるほうが早いことが多いです。
- 認証の回数を数える。 何回入力させているかを数えてみると、たいてい想定より多いはずです。
この4つに、高齢者専用の技術は使われていません。全部、普通の設計判断です。