UGC
ステマ規制のもとでは、頼んで書いてもらった口コミは自社の広告です
2023年10月1日から、事業者が依頼した投稿は景品表示法上その事業者の広告として扱われています。これまでの事例に登場するのは、500円の割引、商品の無償提供、ワクチン接種費用の値引きといった小さな見返りです。
東京都大田区のあるクリニックは、インフルエンザワクチンの接種に来た人に対し、Googleマップで星5か星4の評価を投稿すれば接種費用を割り引くと伝えていました。実際に投稿した人がいました。2024年6月6日、消費者庁はこのクリニックに措置命令を出しています。表示の取りやめ、一般消費者への周知、再発防止策が命じられました。
投稿の中身が嘘だったわけではありません。問題は、クリニックが見返りを用意して書いてもらった評価だと、読む人には分からなかったことです。
規制が見ているのは一点だけ
2023年10月1日から、景品表示法の不当表示に一つ類型が加わりました。一般消費者が事業者の表示だと判別できない表示、いわゆるステルスマーケティングです。
2023年3月28日に決定された運用基準によれば、判断の中心は「事業者が表示内容の決定に関与したかどうか」です。事業者が第三者に頼んで、SNSや口コミサイトに自社の商品やサービスについて投稿させた場合、その投稿は事業者の表示、つまり広告として扱われます。
規制の対象は事業者です。投稿した本人が命令を受けるわけではありません。
従業員の投稿も対象になり得ます。販売や開発を担う役員、管理職、担当チームのメンバーのように、販売を促進する立場にある人の投稿は、会社の表示と判断されます。
明瞭な表示とは何か
運用基準は、明瞭と認められる例として「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」という文章を挙げています。
不明瞭な例も具体的です。大量のハッシュタグの中に埋もれさせる。動画で認識できないほど短い時間だけ表示する、長い動画の途中や末尾にだけ表示する。周囲より小さい文字や薄い色で書く。冒頭に「広告」と書きながら、本文で「第三者としての感想です」と書く。
実際の事例
2026年5月28日に公表された令和7年度の運用状況によれば、ステマ告示に関する処理は確約計画の認定が4件、指導が7件、合わせて11件でした。
内容は、どこにでもありそうなものです。
- フェイシャルサロンが、予約サイトの口コミ欄に星5を投稿すれば次回の施術料金を500円割り引くと伝え、さらに従業員も星5の口コミを投稿していた
- 冷凍宅配食のサービスが、商品の無償提供を条件にInstagramへの投稿を依頼し、その投稿を販売サイトの「Instagramでの投稿レビュー」という欄に抜粋して載せていた
- ネット販売の事業者が、星5の評価とレビューの投稿を条件にギフトカードを付与していた
- サプリメントの販売事業者が、モニター募集サイトで対価を示して星5のレビュー投稿を依頼していた
- 葬儀会社が、口コミサイトに自社サービスの評価を自ら投稿し、職員の対応を称賛していた
どの事例でも、読む人が目にする内容を事業者が形作り、読む人にはそれを知る手段がありませんでした。
投稿の二次利用に気をつける
UGCを扱う企業にとって最も参考になるのは、冷凍宅配食の事例です。クリエイターや一般の人に商品を提供して投稿してもらうこと自体は珍しくありません。問題になったのは、その結果生まれた投稿を、第三者の自発的な感想のように販売ページへ転載したことでした。
自社サイトは通常、自社の広告だと誰にでも分かるので、告示の対象にはなりません。ただし運用基準には例外があります。専門家や一般消費者の意見に見えるものを自社が依頼して書いてもらった場合、あるいは自社で書いた場合は、そのことを明示しなければなりません。運用基準は「弊社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」という書き方を例に挙げています。
つまり、開示は内容と一緒に移動させる必要があります。Instagramの投稿に付いていたPR表記はInstagramに残ります。同じ文章をランディングページに載せるなら、そのページで改めて開示が必要です。
確認すること
- 口コミや投稿に付けている見返りをすべて書き出す。割引、商品提供、ギフトカード、ポイント
- 開示は投稿の冒頭に、普通の文字で入れてもらう。動画なら最初の数秒に
- 依頼した投稿を自社サイトや広告に使うときは、依頼したものだと一文添える
- 営業やマーケティング担当者の投稿は、会社の投稿として扱う
- 誰に、何を、いつ提供したかを記録しておく
商品を送ることも、クリエイターに報酬を払うことも禁止されていません。求められているのは、それが広告だと読む人に分かるようにすることだけです。