デザイン経営
国内市場で成功した理由に「デザイン」を挙げた企業は0.8%
従業員100人以上の製造業25,000社への調査で、国内市場での成功要因に品質・機能を挙げたのは38.3%、デザインは0.8%でした。米国市場向けでは0.0%です。
経済産業省と特許庁が2018年に出した「デザイン経営」宣言の1ページ目に、脚注として置かれた数字があります。本文より、この脚注のほうが日本の状況を正確に説明していると思います。
従業員100人以上の製造業25,000社への調査。国内市場で成功した理由として品質・機能を挙げた企業は38.3%。デザインを挙げた企業は0.8%。
米国市場向けでは、品質・機能が63.6%、デザインは0.0%でした。
ゼロです。四捨五入してゼロになる水準ということです。
この数字を疑うべきではない理由
自己申告の調査なので、実態とずれている可能性はあります。しかし、ずれているとしても、それ自体が問題です。
デザインが成功に寄与していたのに認識されていないなら、社内でデザインへの投資判断ができません。予算がつく理由がないからです。
デザインが本当に寄与していなかったなら、それは日本の製造業が機能と品質だけで戦ってきたということです。そして機能と品質は、コピーされます。
どちらの解釈でも、結論は同じ方向を向きます。
生産性の推移と重ねる
日本生産性本部の労働生産性の国際比較2025によれば、日本の製造業の労働生産性は80,411ドルで、OECD35カ国中20位です。
同じ指標で、日本の製造業は2000年にOECD1位でした。2005年と2010年に7位、2015年以降は15位から20位の間を推移しています。
時間あたり労働生産性で見ると、日本全体は60.10ドルで38カ国中28位。2018年は21位でした。
順位が下がった理由をデザインだけに帰することはできません。ただ、成功要因としてデザインを0.8%しか挙げない産業が、機能で差がつかなくなった時代に順位を落としているという並びは、偶然には見えません。
デザインは意匠のことではない
「デザイン経営」宣言が言っているデザインは、見た目の話ではありません。宣言の中では、ブランド構築とイノベーションの両方に効く経営資源として定義されています。
具体的には、次のような判断のことです。
- 誰のためのものかを決める
- 何をやらないかを決める
- 使い始めてから使いこなすまでの経路を設計する
- 迷う場所を減らす
これらは全部、製品が出てからでは変えられない判断です。そして全部、機能仕様書には書かれません。
宣言の第5章には投資対効果の数字も載っています。英国デザインカウンシルの調査でデザイン投資1ポンドに対し4ポンドの利益、DMIのデザインバリューインデックスでS&P500の2.1倍。海外の数字ですが、参照されている理由は、国内に同等の調査がほとんどないからです。
これらの会社でデザインが効いている可能性は十分にあります。ただ、誰も測っていないので、予算をつける根拠が社内に存在しません。
測るところから始める
デザインへの投資を社内で通したいなら、順番はこうです。
- 今ある製品の、迷いが発生している箇所を特定する。 問い合わせの内容、離脱の位置、社内の手戻り。すでにデータはあります。
- その箇所を金額に換算する。 問い合わせ1件あたりの対応コスト、離脱率1ポイントの売上影響。粗くて構いません。
- 改善して、同じ指標で測り直す。 前後の比較ができる形にしておく。
この3ステップを1回通すと、社内でのデザインの位置づけが変わります。意見の問題が数字の問題になるからです。
宣言が出てから8年が経ちました。0.8%が動いたかどうかを示す新しい調査は、まだありません。
出典
- 経済産業省・特許庁「デザイン経営」宣言(2018年5月23日)脚注1、1ページ
- 日本生産性本部 労働生産性の国際比較2025(2025年12月)