人材
DX人材の質が足りていると答えた日本企業は3.8%
IPAの調査で、DX人材の質が確保できていると答えた企業は日本で3.8%。米国は52.9%です。採用で埋めようとしても、8割が不足を訴えながら19.4%は採用していません。
IPAのDX動向2025に、他の数字がかすむような比較があります。
DX人材の「質」が確保できていると答えた企業の割合。日本3.8%、ドイツ25.1%、米国52.9%。
量ではなく質の話です。日本企業の96%が、人はいても足りていないと答えていることになります。
不足を言いながら採用していない
同じ調査に、もうひとつ噛み合わない数字があります。8割以上の企業が人材不足を認識している一方で、19.4%は採用活動を全く行っていません。
矛盾しているように見えますが、現場では説明がつきます。
採用の要件が書けないからです。何ができる人が必要なのかを言語化できないまま募集をかけると、応募者の評価ができません。評価できないので採用が決まらない。決まらないうちに募集を止める。
要件が書けない理由は、社内にその職能を評価できる人がいないことです。評価できる人を採るために評価できる人が必要という循環に入っています。
不足している役割も国によって違う
IPAの調査では、最も不足している役割も比較されています。日本で挙がるのはビジネスアーキテクトです。米国とドイツではデータサイエンティストでした。
ビジネスアーキテクトというのは、業務と技術の間を設計する役割です。何を作るかを決め、既存の業務のどこに入れるかを決める人。
日本で不足しているのがこの役割だというのは、前の記事で見た「業務プロセスをAI中心に変更した企業が6.0%から11.9%」という数字と正確に一致します。作れる人がいないのではなく、何を作るかを決める人がいない。
そしてもうひとつ、日本企業の56.4%はAI研究者を「必要ない」と答えています。研究者は要らないという判断自体は、多くの事業会社にとって妥当です。問題は、代わりに必要な役割が特定されていないことです。
足りないのはエンジニアではなく、業務と技術の間に立って設計する人です。求人票が書けないのは、その職能を社内で定義したことがないからです。
採用以外の3つの選択肢
3.8%という数字は、採用市場だけで解決しません。現実的な手は3つです。
- 既存社員の転換。 業務を最もよく知っているのは現場の社員です。技術を教えるほうが、外部の技術者に業務を教えるより早い場合があります。人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、訓練費用の最大75%を助成します。
- 外部と組んで、引き継ぐ前提で作る。 作って納品して終わりではなく、運用と改善を社内でできる状態にして渡す契約にする。設計判断の理由をドキュメントに残すことを成果物に含めておくと、引き継ぎの質が変わります。
- 要件を先に固める。 採用の前に、最初の3か月で何をしてもらうかを工程レベルで書き出す。書けなければ、その職種はまだ採るべき段階ではありません。
質の定義から始める
「質が確保できている」と答えられる状態とは、具体的にどういう状態か。少なくとも次が言えることです。
- 作るものを決められる人がいる
- 決めたものを実装できる人がいる
- 動いているものを直せる人がいる
- この3人が同じ言葉で話せている
4つ目が抜けている組織が多いと感じます。専門性の高い人を集めても、業務の言葉と技術の言葉が翻訳されないまま進むと、成果物は要件から静かにずれていきます。
日本に能力のある人がいないわけではありません。その能力が組織の中で機能する形が作られていないだけです。3.8%が測っているのは、その不在です。